命の果実と呼ばれるアムラ -インドで「母」と呼ばれてきたもの-
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oil stories — amla
インドに、「母」と呼ばれている果実があります。アムラといいます。ナーガラージのオイルに入っている素材のひとつです。
インドの村を歩くと、庭先に小さな黄緑色の実がなっているのを見かけます。大きさは2〜3センチくらい。かじると、すっぱくて渋い。でもそのあとに水を飲むと、不思議なくらい甘く感じられます。
この実が、どうしてそんなふうに呼ばれてきたのか。少しだけ、お話しさせてください。
アムラって、どんな果実?
アムラは、インドやその周辺に自然に生えている木の実です。日本ではあまり見かけませんが、英語では「インディアン・グーズベリー」、日本語では「ユカン」と呼ばれています。実がなるのは、秋の終わりから冬にかけて。
インドにはアーユルヴェーダという、5000年ほど前から続く伝統医療があります。「体と心のバランスを整える」という考え方が中心にある、暮らしに根づいた知恵です。
そのアーユルヴェーダの古い書物に、アムラは何度も登場します。しかもただ登場するだけでなく、かなり特別な扱いを受けています。
「母」と呼ばれてきた
アムラには、果実の名前とは別に、いくつもの呼び名があります。
- ダートリ母、乳母
- アムリタ・パラ命の果実
- ヴァヤスターパナ年齢を留めるもの
- シヴァー縁起のよいもの
なかでも心に残るのが、「母」という呼び名です。
「これを使えば治る」という言い方ではなく、「母のように、体を養い育ててくれるもの」という捉え方をしている。
ここに、アーユルヴェーダらしさがよく出ていると思います。外から何かを足して変えるのではなく、その人がもともと持っている力を、少しずつ取り戻していく。そういう考え方です。
ひとつの実に、5つの味
アムラについて、古い書物はこんなことを書いています。
「塩味以外の5つの味
――甘い、すっぱい、苦い、渋い、辛い――
をすべて持っている」
味は全部で6種類あるとされているので、そのうち5つを持っているということになります。
ひとつの食べものが複数の味を持つこと自体は珍しくありません。でも5つとなると、ほとんど例がない。それだけアムラは特別な果実だと考えられてきました。
なぜ髪に使われてきたの?
ここからが、少し面白いところです。
アーユルヴェーダでは、体の中に3つの性質がはたらいていると考えます。それぞれ、風・火・水にたとえられます。
この3つのバランスが崩れたときに、体調や肌、髪の調子も変わってくる、という考え方です。
そして髪について、アーユルヴェーダはこう見ています。
髪は、体の奥のほうの状態が、
表に出てきたもの。
だから髪の変化を、髪だけの問題としては見ない。体の内側で起きていることの、あらわれとして読む。
そのうえで、頭のあたりの調子を左右するのは主にピッタ(火)だと考えられてきました。頭にこもった熱が、髪と頭皮の状態に関わってくる、と。
アムラは、この「火」の熱を冷ましてくれる果実とされています。
しかもすっぱい味なのに、体を冷やす。ふつう、すっぱいものは体を温める方向にはたらくので、これはかなり珍しいことなのだそうです。
熱を冷ましながら、体の奥を養う。だからアムラは、髪のお手入れの中心に置かれてきました。
どうして「オイル」?
インドでは昔から、アムラをそのまま頭につけるのではなく、乾かした実を植物油に漬け込んで使ってきました。時間をかけて、実の成分をオイルに移すのです。
なぜわざわざ、そんな手間をかけるのでしょう。
理由があります。
さきほど「頭の熱はピッタ(火)」とお話ししました。でも、その熱を頭まで運んでいるのは、実はヴァータ(風)のはたらきだと考えられています。風が火を運ぶ、というイメージです。
そしてヴァータ(風)は、乾きと軽さの性質。これを鎮めてくれるのが――オイルなんです。
インドで昔からオイルマッサージ(アビヤンガ)が大切にされているのは、このためです。オイルの重さと潤いが、風の乾きにちょうど対応する。
つまり、こういうことになります。
アムラが「火」を冷まし、
オイルが「風」をなだめる。
中身と、それを溶かし込むもの。その二つが、それぞれ別の役割を持っている。
「アムラをオイルに漬ける」というやり方が何千年も残ってきたのは、たぶんこういう理由なのだと思います。よくできた仕組みだな、と思います。
オイルを頭皮になじませて、しばらく置いてから洗い流す。インドでは今でも、母から娘へ受け継がれる習慣として残っています。
特別なケアというより、暮らしのなかの当たり前のこととして。
日本でいえば、湯船につかるようなものかもしれません。
ほかにもこんな使われ方があります
トリファラ
アムラを含む3種類の果実を合わせたもの。インドで最も広く使われてきた組み合わせのひとつです。
チャヴァナプラシュ
アムラをメインにした、ジャムのような滋養食。インドの家庭では今も、朝にスプーン1杯食べる習慣があります。「これを食べた老人が若さを取り戻した」という言い伝えから名前がついています。食べやすく、滋養梅ジャムのような味です。
髪を洗うのに使う
シカカイやリタといった植物と合わせて、粉にして髪を洗う方法も伝えられています。ヘアトリートメントでも、アムラは非常によく活用されます。
ナーガラージのオイルについて
アムラは、ナーガラージの2本のオイル――頭皮ヘア用オイル dusk till dawn と スカルプオイル awaken your roots の、どちらにも入っています。
インドで昔から行われてきたオイルケアを、日本の暮らしのなかで続けられる形にしました。
頭皮ヘア用オイルは、伝統的な使い方。シャンプーの前に、頭皮になじませて、しばらく置いてから洗い流すだけ。15分の日もあれば、一晩置く日もある。それくらいの気軽さで大丈夫です。
スカルプオイルは、オイルをつけてそのまま置いておくだけです。
2本は、はたらきかける場所が少し違います。どちらが合うかは、いまの髪と頭皮の状態によって変わります。
どちらが合うか迷う方は、
1分の診断からどうぞ。
母。
何千年も前の人たちが、ひとつの果実にこの名前をつけました。
そこには、体を「直すもの」として見るのではなく、「育てていくもの」として見るまなざしがあります。
伝統を大事にしながら、それをどう現代の暮らしに馴染ませられるか。ナーガラージは、そこを大事にしています。