ヘアオイルを頭皮と髪に塗る。--インドの伝統処方から生まれた1本のオイルの話
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hair & scalp — dusk till dawn
パサつきやうねり、
年齢とともに変わっていく髪。
その手入れを、私たちはつい「髪そのもの」にしがちです。けれど、アーユルヴェーダの答えは少し違います。
インドのヘアオイルは、
髪にも頭皮にも塗るもの。
今回は、ナーガラージの頭皮・ヘア用オイルの軸にある考え方を、処方の由来から、伝統医学の見立て、現代の毛髪科学、そして「ゆるむ時間」の話まで、順にご紹介します。
1はじまりは、
南インドのドクターの処方箋
ナーガラージの頭皮・ヘア用オイルの出発点は、南インド・タミル・ナドゥ州——開発者がアーユルヴェーダを実践する中でお世話になった、ひとりの女性ドクターから受け継いだ、髪と頭皮のための伝統処方です。
アーユルヴェーダの本場では、ココナッツオイルにハーブを時間をかけて煎じ込み、その力をオイルに移すという、伝統的な薬効ヘアオイルが存在します。開発者が受け継いだのも、ココナッツオイルにハーブを漬け込んだ浸出オイルでした。インドでは数千年、家庭でも治療院でも、この浸出オイルを頭皮になじませることが髪の手入れの中心でした。
わたしたちはこのドクターの処方を、日本の化粧品基準と、日本人の頭皮・髪質・香りの好みに合わせて再設計しました。インドの伝統を、現代人に合わせてさらに発展させていく——オイル開発の、大事な最初の1本でした。
2アーユルヴェーダから見た
オイルの働き
アーユルヴェーダでは、心身の状態を3つのエネルギー(ドーシャ)——ヴァータ(風)、ピッタ(火)、カパ(水)——のバランスで読み解きます。
風
vata / ヴァータ
火
pitta / ピッタ
水
kapha / カパ
髪と頭皮の不調の多くは、乾燥・冷え・動きすぎを司るヴァータ(風)の乱れとして現れると考えられてきました。パサつき、乾燥した頭皮、細くたよりない髪——現代の私たちの悩みの多くが、まさにこの領域です。
ヴァータ(風)をととのえる第一の手当てが、オイルを「塗る」こと。アーユルヴェーダでは、オイルそのものにも性質があると考えます。冷性のココナッツオイルは、火照りやすい頭皮を穏やかに鎮めるオイルとして南インドで古くから使われ、受け継いだ処方の土台にありました。そこに、乾燥(風)に傾いた状態を落ち着かせる温性のセサミオイルを合わせる——このオイルは、ココナッツオイルとセサミオイルを主軸に据えています。
そこに合わせたのが、髪の手入れで最も重んじられてきた果実アムラ——「ラサーヤナ(若々しさを保つもの)」と呼ばれ、ヘアオイルの中心に据えられてきた、アーユルヴェーダを象徴する素材です。さらに「髪の女神の花」と呼ばれるハイビスカス、そして冷性で心を鎮めるとされる香木ビャクダン。それぞれが、アーユルヴェーダの古典のなかで髪と頭皮への位置づけを持つ植物たちです。
3現代の毛髪科学と
照らし合わせると
面白いのは、この伝統処方が、現代の毛髪科学とかなりの部分で重なることです。
伝統がココナッツオイルとセサミオイルを選んだこと
現代の化粧品科学でも、ココナッツオイルは他の一般的なオイルに比べて毛髪となじみやすい性質が研究報告されています。ラウリン酸を中心とする中鎖脂肪酸の構造が、髪の主成分ケラチンと相性がよいとされているのです。実は今、世に出ている多くのヘアケア商品に、ココナッツ由来の成分が含まれています。
伝統がアムラを「若々しさの果実」と呼んだこと
現代の分析では、アムラはビタミンCやポリフェノールを豊富に含む果実として、食品・化粧品の両分野で広く研究されています。
伝統が「オイルを頭皮に塗って髪を養う」としたこと
現代のヘアケアでも、頭皮の乾燥はかゆみやフケの一因とされ、頭皮の保湿はスカルプケアの基本とされています。
数千年の伝統と、現代の研究知見が、別々の道から同じ場所に近づいている。伝統処方を軸にすることの意味は、ここにあります。
4ゆるむことは、美容である
——シロダラが教えてくれること
アーユルヴェーダのトリートメントで最も有名なもののひとつがシロダラ——額に温かいオイルを垂らし続ける施術です。「脳のマッサージ」とも言われる深いリラクゼーションで、「アーユルヴェーダというと、額にオイルを垂らすやつね!」とよく言われるようになりました。
シロダラが象徴しているのは、アーユルヴェーダにおいて頭部とオイルの組み合わせは、髪の手入れである以前に「心をゆるめる行為」だということです。インドの家庭で親が子の頭にオイルを塗る時間も、大人が一日の終わりに頭皮をなじませる時間も、ケアであると同時に、心をゆるめるひとときでした。
そしてアーユルヴェーダは、この「ゆるむこと」を美容と切り離しません。心と体はひとつづきであり、心の緊張は体のこわばりとして現れ、体がゆるめば心もほどける——数千年前からの、この医学の根本の見立てです。
実際、自分の頭皮に触れてみると、それは実感としてわかります。忙しい日が続くと、頭皮は張りつめて、動きにくくなっている。逆に、オイルをなじませて手のひらでゆっくりほぐすと、頭皮がやわらいで、いつのまにか呼吸が深くなり、肩の力が抜けている。頭がゆるむと、心がゆるむ。心がゆるんだ夜は、よく眠れる。
美しさは、この積み重ねの先にあります。すこやかな頭皮も、ととのった髪も、一晩の特別なケアではなく、心地よくて続けたくなる毎日の習慣から生まれるもの。
「効きそうだから頑張って塗る」オイルではなく、「気持ちいいから、今夜も塗りたくなる」オイルであること——それが、いちばんの美容への近道だと考えています。
ゆるむことは、美容である。
シロダラをサロンで受ける時間はなくても、その小さな断片は、毎日の数分に持ち込めます。
今夜、オイルを頭皮にじっくりなじませて、ひと呼吸。
5000年の知恵は、そんな小さな夜から、
あなたの髪に届きはじめます。
本記事はアーユルヴェーダの伝統的・文化的な背景の紹介を目的としたものであり、製品の効果・効能を示すものではありません。