「死以外の全てを治す」ブラッククミンシードオイル 脅威の力

「死以外の全てを治す」ブラッククミンシードオイル 脅威の力

oil stories — black cumin

めったに市場に出てこない、黒い種のオイルがあります。ブラッククミンシードといいます。頭皮にも、肌にも。ナーガラージのオイルでも重宝している素材のひとつです。

「死以外のすべてを癒す」

大げさに聞こえるかもしれませんが、これは私たちが考えた言葉ではありません。

イスラムの伝承に、こう記録されています。

「この黒い種には、
あらゆる病の癒しがある。
死を除いては」

7世紀の言葉です。以来千年以上、中東の家庭ではこの一節とともに、この種が受け継がれてきました。

植物にこれほど大きな名前がつくのは、たいてい「よく効いたから」というより、暮らしのすぐそばにずっとあり続けたからだと思います。特別なものではなく、どの家にもある。そういうものにこそ、人は大きな名前をつけたくなる。


このブラッククミンシード、じつは、クミンではありません

学名は Nigella sativa。キンポウゲ科の一年草です。

料理に使うクミンはセリ科なので、まったくの別物。黒くて、スパイシーで、大きさが似ている——それだけの理由で「黒いクミン」と呼ばれるようになりました。

ナンやトルコのパンの表面にまぶしてある黒い粒。あれがこの種です。

ブラッククミンシードオイルは、食用オイル、化粧品原料としては存在しますが、単体のオイルとして店に並ぶことがほとんどなく、あまりお見かけすることのないオイルです。なかなか手に入らないオイルなので、ナーガラージのオイルに導入するときも、珍しいオイルは入手経路に毎回苦戦しています。

手にとると、思ったより軽い

実際にブラッククミンオイルを見てみると、澄んだ、やや琥珀がかったオイルです。

  • 不飽和脂肪酸全体の約85%
  • うちリノール酸約58%
  • オレイン酸約24%

オイルが重く残るか、軽く入っていくかは、じつはこの構成でほぼ決まります。

オレイン酸が多いオイルは、とろりとして肌にとどまる。リノール酸が多いオイルは、軽くてすっと入る。

γ-トコフェロールも多く含まれています。植物のオイルが、自分の質を保つために持っている成分です。

ブラッククミンは、肌に使うときに「オイルは重いから苦手」という方にこそ、一度試していただきたいオイルだと思っています。食用のブラッククミンオイルを飲んでみるとピリッとした後に苦味があり、非常に飲みにくいオイルです。体にいいと言われても、なかなか食用として活かしにくいのですが、良薬は口に苦し。と言われるように、ブラッククミンもその類です。

アーユルヴェーダは、この種を「鋭い」と書いた

アーユルヴェーダは素材を「何に効くか」ではなく、「どんな性質を持っているか」で読みます。温めるのか冷ますのか。重いのか軽いのか。

ブラッククミンについて、古い書物はこう書き留めています。

  • 辛味と、苦味
  • 性質温める
  • 軽い・乾いている・鋭い

この「鋭い」(ティークシュナ)というのが、刃物のことではありません。奥まで入っていく、細いところを通っていく、という意味あいです。

体には細い通り道がいくつもあって、そこが詰まると必要なものが届かず、要らないものが留まる。鋭い性質の素材は、その詰まりに向かうとされてきました。

噛んだときの、あのぴりっと突き抜ける感じ。あれをそのまま性質として書き留めたのだと思うと、昔の人の観察力に驚きます。

乾いた頭皮にも、重い頭皮にも

アーユルヴェーダでは、頭皮に起きることを大きく二つの方向から見ます。

ひとつは乾き。かさついて、粉をふいて、髪もぱさついて広がる。

もうひとつは重さと滞り。べたついて、張りついたようで、頭皮が動きにくい。

ふつう、この二つに向かう素材は別ものです。乾いた頭皮には潤すオイルを、べたつく頭皮にはさっぱりしたものを——そう分けるのが自然な発想でしょう。

ブラッククミンは、その両方に向き合う性質を持つとされてきました。温かさが乾きの側の冷たさに、軽さと鋭さが重さの側の滞りに、それぞれ対応する。

ひとつの素材が正反対の状態にはたらく。めずらしいことです。この種が、これほど広い地域で長く使われてきた理由は、たぶんここにあります。


頭皮は肌です。顔と一枚でつながっていて、境目はありません。

ただ、条件がかなり違います。皮脂腺が体のなかでもっとも多く、髪に覆われていて、風も光も通りにくい。蒸れやすい場所です。

だから重いオイルをたっぷり置くと、洗ってもなかなか抜けません。軽いオイルが向くのは、この場所の条件によります。

そしてアーユルヴェーダは、髪をこう見ます。

髪は、体の奥のほうの状態が、
表に出てきたもの。

だから髪の変化を、髪だけの問題としては見ない。頭皮という土壌の状態として読む。

ブラッククミンが「髪の素材」ではなく「頭皮の素材」として扱われてきたのは、そういう見立てからです。頭皮をすこやかに保ち、髪にハリとコシを与えるオイルとして、昔から重宝されてきたのです。

体質別の、付き合い方

ヴァータ

乾いて、かさつく、ぱさつく、冷えている。——温める性質が向き合います。伝統的にはもっとも相性がいいとされる体質です。

カパ

べたつく、重い、張りついた感じ。——軽さと鋭さが向き合います。重いオイルが苦手な方にも扱いやすい。

ピッタ

熱がこもる、赤みが出やすい。——温性のオイルなので、量は控えめに。少量を、間をあけて。使いすぎないというのが、この体質での付き合い方です。

あの香りの正体

スパイシーで、ほろ苦く、少しだけ癖がある。

もとはチモキノンという成分で、精油部分の約2割を占めています。この種の性格そのものといっていい香りです。

好き嫌いは、正直に分かれると思います。ナーガラージでは、ほかの素材と合わせることで、この香りが立ちすぎないようにしています。

ナーガラージのオイルについて

ブラッククミン(ニゲラサチバ種子油)は、ナーガラージのいくつかのオイルに配合しています。頭皮にうるおいを与える素材として、また肌に使うオイルの一部としても。

頭皮に使うものとしては、スカルプオイル awaken your roots に入っています。

つけて、そのまま置いておくだけ。洗い流す必要はありません。軽いオイルなので、夜のうちになじませても、朝に重く残りません。

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